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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

10/24号

『特集:文学とは何か?紙媒体の文学の転換期!?』
  1. 大学1年の初夏。「週刊サンデー毎日」の対談に応募して採用された。東西線・竹橋駅真上のパレスサイドビルの毎日新聞社に集まったのは女性1人を含む4人。メンバーの記憶は全くないし、掲載された“ブツ”も、どこにしまったのか手元にはない。
  2. 高校を卒業して間もない田舎者が、熟練の諸氏に敵うわけがない。特に「ベトナムに平和を連合」通称ベ平連の女性には完膚なきまで“論破”された。3ページ建ての対談で、掲載された発言が「そうですよね」だけだった。慣れないスーツ姿の写真入りの紹介文には「純な早大生」となっていた。ものの見事に完璧に“完封”された。
  3. その時に話題となったのが“反戦歌”だったボブ・ディランの「風に吹かれて」だった。ラジオの深夜放送全盛の当時、確かに聞いたことのある曲ではあったが、それがロックであり、フォークの原点であることなど考えたこともなく、また知る由もなかった。
  4. 恋愛を歌った歌謡曲が中心の時代であり、「風に吹かれて」の一見寂しげな翻訳歌詞やメロディが恋愛ではなく、実は世の中の現実や厳しさを描いているということがキッチリ理解できたのはそれから4年も経って、大学を卒業した頃である。
  5. ボブ・ディランが登場する1960年代は公民権運動やベトナム反戦など、若者の政治意識が高まった時代である。「どれだけ多くの人が死んだら、多くの人が“人が死に過ぎている”ことに気付くのか」「答えは風に吹かれている」。
  6. 「Blowin’ in the Wind=(邦題)風に吹かれて」でディランは、音楽的にはフォークにロックを融合させながら、象徴や隠喩を多用した難解で複雑な歌詞を追求していった。曲が長くなろうが、字余りになろうが、自分の言いたいことや文学性を優先させて歌い、発表して半世紀を経て、後世にも歌い継がれる世界の名曲となった。
  7. そのボブ・ディランにノーベル文学賞が与えられることになった。受賞理由は、「ロックに言葉を与え、ロックを芸術にまで高めた」となっている。ポピュラーソングの作者がノーベル賞に輝いた例は過去にはない。発表になった時の第一声は、一概に「ええっ!」だったのではないか。自分は「他にいないのかよ?」とも思った。
  8. この時期、毎回候補に上がり、結局は受賞できない日本の有名作家が話題になる。代表作が「ノルウェーの森」。だが、浅はかな自分には、何回読んでも学生時代のノスタルジィを綴っているようにしか思えず、世界に通用するか否かは疑問視していた。今回、ディランが受賞したことで、受賞の可能性が薄らいだとみるが、考え過ぎだろうか。
  9. スマホ時代の全盛で、紙媒体の文学の存在が薄らいでいる。「本を読む」時代が終わったのだろうか?肝心のディランは「授賞式に出るのか出ないのか」黙して語らず、である。風に吹かれて生きるディランらしいとも言えるが、やはり時代の転換期なのだろう。文学とは何か、ノーベル賞の権威と何か。違和感を楽しむ(!?)時なのかもしかない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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