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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

1/30号

『特集:世界を揺るがすツイッター大統領の口害』
  1. 1月25日、帝国ホテルでの横綱伝達式。19年振りの日本人となる・第72代横綱・稀勢の里が誕生した。余計な形容詞を一切使わない朴訥とした口上。だが、かえってそれが好感度を増した。理由は明確だった。1月20日の就任式から、まるでマシンガンのように連発する米45代大統領・ドナルド・トランプの発言に癖壁していたからである。連日の「レアステーキ」に胃もたれし、「白菜の浅漬け」がことのほか美味だった。
  2. 新大統領の掲げたテーマは「偉大なる米国の復活」。そして「理念」よりも「実利」。「国際協調主義」よりも「単独行動主義」。これは「深刻な不況とソ連の脅威で自信を喪失した国民を鼓舞し、経済・軍事の両面で「強い米国」を目指した」故レーガン大統領を見習ったものだった。だが根本の考え方に“時代錯誤”があるように見える。
  3. 余りに過激に内向きの変革を志向する“異端児”を前に、世界の緊張は高まっている。世界は新大統領の3つの「不」に身構える。まずは「不寛容」。貿易収支の赤字を容認せず、中国、メキシコ、日本を名指しで牽制する。高率の関税や企業への脅迫で投資や雇用を向けさせ、米製品を買わせようとする。
  4. 第2は「不連続」。就任初日から、オバマケア(医療保険制度改革法)と環太平洋経済連携協定(TPP)を排除した。既存政権の遺産を破壊することに活路を見出そうとしている。一方的な関税引き上げや輸入制限は世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する。一連のグローバルな枠組みが米国の雇用や富を奪ったとする新大統領は、既存のルールや機関の否定に走り始めたのだった。
  5. 結果として生じる第3の懸念は「不透明感」である。積極財政策などへの期待から“トランプ相場”を享受した金融市場が“次の手”に戸惑っている。ヘッジファンドの雄・ジョージ・ソロス10億㌦損失との噂も、市場をビビらす結果になっている。
  6. 1月17日の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、自由主義経済の大切さを得々と(説いたのは誰あろう、中国の習近平国家主席だった。民主主義と自由市場の先陣を切るべき米英が自国優先に舵を切り、非民主主義の中国がグローバル化の盟主を気取る。まさに倒錯したギャグである。
  7. 戦後の米国は孤立主義と決別し、自由主義や民主主義の守護者として世界の繁栄と安定に貢献してきた。公人になった後も選挙前と同様にツイッターを縦横無尽に駆使する、たったひとりの指導者の出方次第で、超大国と国際秩序の変質が深刻になり始めている。
  8. 「米国人の大きな特権は、失敗を犯してもこれを正す自由がある点にある」(トクヴィル「アメリカのデモクラシー」)。常にマスコミとけんか腰で相対し、不支持51%の大統領に明日はあるのか。米国は勿論、世界各地から非難の声が広まる。「そんな(異端な)大統領を選んだのは誰なんだ?」。「新大統領辞任劇」の可能性を考えざるを得ない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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