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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

4/17号

『特集:永過ぎた春!?戦後第3位「アベノミクス景気」』
  1. 4月10日。突然のタイミングで「浅田真央引退」の報が流れた。そして12日、都内での引退記者会見。ここ10年、女子フィギュアを優良コンテンツに仕上げた国民的人気スケーターの、さわやかな会見だった。“散るサクラ”はいつもはかなげで、ことの他ウツクシイ。うざったい会見が続いていただけに、洗われるような気がする会見だった。
  2. さて一方で、2012年12月に始まった「アベノミクス景気」が戦後3番目の長さになった。第二次安倍政権が発足した12年12月に始まった景気回復は、17年3月までで52カ月となり、86年12月~91年2月の51カ月間だったバブル経済期を抜き、戦後3番目になった。安倍政権はめでたく“サクラ満開の時期の到来”の様相を呈している。
  3. そして今年9月まで続けば、65年11月~70年7月の57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」をも抜き去ることになる。ただ戦後最長となった00年代の輸出は8割伸びたが今回は2割増。設備投資も1割増と00年代の半分。賃金の伸びは乏しく、個人消費は横ばい。総合して考えれば、「緩やかな」あるいは「低温」と表現するのが妥当なようだ。
  4. かくして長期政権を謳歌する安倍政権だが、「アベノミクス」という短期志向の政策を手を変え、品を変え、積み重ねて継続する中で、そのシナリオに慣れ、近未来に控える「リスク」に鈍感になっている。例えば2020年には3つの「2020年問題」が控える。
  5. 第1は「高齢化の圧力」。20年前半には戦後のベービーブーム生まれの「団塊の世代」が75歳以上に達し、社会保障の支出が急速に膨らむ。第2は「東京五輪の波」。消費や建設需要の反動減に加え、日本を取り巻く高揚感の後退で、海外投資家が日本離れを起こし易くなる。ギリシャの長い苦境は04年の夏の五輪を境に始まった。
  6. 第3は黒田東彦総裁のもとで日銀が始めた異次元緩和の「手仕舞い」を考えなければならない点である。発行残高の4割の国債を保有する日銀は、年70~80兆円のペースで国債を買い続けている。欧米で金利が上昇し、その圧力が日本に及べば、ゼロ金利を維持するためには更なる強力な買取を迫られる。「長期金利をゼロに留めておけば金利負担は軽い」。従って「借金が巨額でも財政は悪化しない」との論理だが、17年夏にも買い入れの限界を迎えるとの試算もあり、予断は許さない。
  7. 黒田総裁は「物価が上がると思えば企業の資金は設備投資に、家計の資金は消費に回る」との考え方が基本だった。しかし最近では「予想物価上昇率の引き上げには不確実性があり、時間がかかる」と、ギブアップ状態になっている。かくして日銀の金融政策は、論理に論理をかぶせて複雑なガラス細工のようになり分かり難くなる一方である。
  8. 森友学園事件から以降、絶対安泰かに見えた安倍長期政権に陰りが見え始めた。確かに安倍首相本人の責任ではないかもしれない。だが“満開のサクラ”を見過ぎた感もする。北朝鮮を巡る緊張が高まっている。永過ぎた春の感。戦争か?怖い気がしている。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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