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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

5/29号

『特集:なぜに日経平均2万円超えをためらう?』
  1. 米NYダウ株価が21,000㌦近辺に張り付き、日本の日経平均が20,000円寸前で上げ止まるなど、金融市場全体が迷走・気迷い状態になっている。そんな中、最近の金融市場で注目されているのが「恐怖指数」と呼ばれる変動性指数(VIX)である。
  2. 余り馴染のない指数だが、VIXとは米S&P500種株価指数を対象としたオプション価格から算出したボラティリティ(予想変動率)を指数化したもの。ちなみに株価が底堅く、投資家心理が落ち着いていればVIXは下がる。
  3. しかし「その状態が行き過ぎると反動が起きる」という経験値も、市場は共有している。当該VIXが8日に9.77と、1993年12月以来、23年振りの水準に落ち込んだ。過去10を割り込んだのは同上1993年と2007年。いずれも1年後にメキシコ通貨危機や、リーマンショックが起きている。つまりは激動の“前触れ”というわけである。
  4. 相場の世界では、こうした状況を「嵐の前の静けさ」と表現をする。かくゆう自分も、NYダウ相場のテクニカル分析で、1年超前から「嵐の前の静けさ」という表現を使ってきた。2009年3月の6,469㌦を底とする株高は8年にわたる長期なものとなっており、しかも6,469㌦×3=19,407㌦を突破し、21,000㌦に到達している。
  5. 確かに月足のチャートは完璧な右肩上がりの理想的な形態となっており、「余りに完璧なのが難点」で、「それが逆に怖い」との論述をしてきた。相場の世界は奇数倍が基本。3倍を超えたから次は5倍。6,469㌦×5=32,345㌦となる。99年8月には90年10月の2,344㌦×5=11,720㌦を超えたが、2009年に向け6,469㌦まで下落している。いずれにしても底値から3倍以上は“神の領域”であり、その領域を超えれば暴落がある。
  6. 昨今のアルゴリズム(自動)取引や超高速取引(HTP)等のコンピュータ売買は、株価の歪みを生み出す行動をとる一般投資家を市場から締め出した。それが利ざやを小さくし、ボラティリティの低下をもたらしている。現状が正常な状況ではないのにである。
  7. ロシア疑惑を巡る捜査を進めた米連邦捜査局(FBI)長官の解任は、同様の決定をして辞任に至ったニクソン政権を想起させる。疑い深く、逆らう者には怒りに任せて罰を与えようとする。政治は実業界のようなディール(取引)の世界ではない。
  8. 思い起こせばニクソン大統領は1971年7月(日本に知らせないまま)訪中し、8月には金・ドルの交換停止や10%の輸入課徴金を決めた。いわゆるニクソンショックである。現状のトランプ政権はTPP離脱から始まって、中国の絵空事「一帯一路」、世界の最狂国・北朝鮮問題を抱え、そして「ロシアゲート」である。
  9. “何か”が起きるための要因満載。金融市場は、読めぬ米国を前に“ダルマさん=手出し無用”の状態が続く。従来通り同盟国・米国と歩調を合わせていればことが済むのか。なぜか2万円超えを躊躇する日経平均。やはり「嵐の前の静けさ」と表現するしかない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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