■今週の市場展望
著者:青柳孝直
6/26号
『特集:この際、どうせ見るならデッカイ夢を』
- 6月20日、小池百合子都知事は臨時記者会見を開き、築地市場を豊洲市場に移転した上、築地跡地は再開発する方針を明らかにした。謳い文句は「築地は守る、豊洲を生かす」。「一挙両得」or「一兎も得ず」?どっちつかずの、日本伝統“折衷案”だった。
- 築地市場の移転問題は、6月23日公示、7月2日投票の都議選の最大の争点とされてきた。小池都知事が20日に示した「基本方針」は、確かに「豊洲ありき一辺倒」ではなく、豊洲と築地をミックスするという(耳触りのいい)妙案ではある。だが安全性を始め、今後の予算をどうするか等、問題山積で、具体性に欠ける。
- ただ今回の都議選では、自民側は「決められない知事」の批判は使えなくなり、モリカケ問題、共謀罪の拡大、憲法改正等で土壇場になって支持率が急落した安倍政権にとっても微妙になってきた。あろうことか「首相の応援は迷惑」との声も出始めている。もし「安倍VS小池」の構図の下で、小池支持勢力が過半数を得ることになれば、直近の世論は一気に「反安倍」→「安倍1強体制崩壊」ともなりかねない。
- 首相側では「都民ファーストは保守。議席を増やすならそれでいい」と、戦う前から“敗色濃厚”のスタンス。負けても安倍と小池は味方だ、とする、わざとらしい予防線を張る。確かに小池都知事には、将来の国政復帰、首相への意欲があるのは周知の事実。
- では築地市場跡地はどう運用していくか。2020年の東京五輪までは仮設駐車場として輸送拠点とし、5年後をめどに再開発する予定になっている。小池都知事は「食のテーマパーク」案を出しているが、市場としての中核機能は築地に戻さない構えである。
- 豊洲の事業費は総額で約5900億円。債務は2017年度末見込みで約3600億円。巨大な施設のため維持管理費もかさみ、減価償却費を除いても年間20億円ほどの赤字が続く。都は築地の貸付で、年間160億円で50年間貸し付けるとの試算をしているが、計画通りに進むかどうか。「4500億円相当の跡地を売却しない限り永久に赤字」なのは明白。
- かくして巷間では築地跡地売却を前提に「日本版ブロードウェイ」「カジノ拠点」「サッカー場」「ドーム球場」等の案が出始めている。どうせならデッカイ夢がある方がいい。あくまで自分の考えだが、「開閉式ドーム球場=築地ドーム球場(仮称)」はどうだろう。
- 銀座から歩いていけるドーム球場。東京ドームが完成して30年、神宮球場はアマチュア中心で、新球場は魅力的。読売巨人の本社は大手町、ヤクルトの本社は新橋で、新球場には異論はないはず。巨人とヤクルトの相乗り形式なら、資金調達もそう難しくはない。この機会を逃せば、今世紀どころか200~300年経ってもそのチャンスはない。
- 杮落しは長嶋茂雄永久名誉監督+55番ゴジラ松井秀喜・新監督の国民栄誉賞コンビ。新時代の野球を観てみたい。有楽町イトシア→銀座→築地→台場と流れる一連のルートに築地ドーム球場が加わる。考えただけで鳥肌が立つような話だが、甘いですかね?...
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円