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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

11/20号

『特集:「今回の株高は少しヘン?」と思わない方がヘン!?』
  1. 初めに断っておきたいのは「日本の株価上昇の全てに懐疑的ではない」という点である。日本の株式市場は、戦前も戦後もいわゆる株屋気質の色濃い世界であり、煽りに煽って、結局はあらかじめ仕込んだ株式を投資家に高値で売りつけて、大相場をスリ抜けてきた歴史だからである。それが要因のない上昇を快く思わない所以である。
  2. 今回の急上昇も、日足・週足が全く機能しない“棒上げ”相場であり、理論的に根拠の薄い“人為相場”の匂いが充満している。確かに現在の金融市場はコンピュータ主導型であり、全てが無機質なコンピュータの仕業だとしても、「コンピュータ・オールマイティ」主義に沿って、全く無防備にコンピュータに従えばいいというものではない。
  3. まず現在の立ち位置を確認したい。アベノミクスに喧伝され12年11月に始まったのが第1波で、9,000円から15,000円に押し上げた。14年の衆院選から15年6月の高値20,868円に到達したのが第2波。そして今回は17年9月8日の19,239円を底に23,000円(=11月9日23,382円)を上抜けた。これが第3波である。
  4. この23,000円という値段はテクニカル的には重要な値段である。ここ30年のスパンで考えれば、89年12月(大納会)の38,957円から、底値の09年3月の7,021の半値戻しが22,989円≒23,000円ということになる。
  5. ではこれ以上の上昇はないのかいえば「???」がつく。テクニカル的には相当無理をしている相場が、このまま驀進するとはどうにも考え難い。「押し目があるから再上昇する」が相場の鉄則。「買っておけば安心」という状況にはない。
  6. 恒例の“後付け理由”を羅列してみる。現在の景気は1965年11月から70年7月までの57カ月間の「いざなぎ景気」を超え、2019年1月まで続けば、02年2月から73月間続いた戦後最長期間を抜く勘定となる。
  7. 背後にあるのは09年7月から8年超続く米景気、9年近く続く独経済、7年超の英経済、約5年の仏経済など、世界の大国の好調経済である。G7の大国日本が世界の列国に仲間入りしてもおかしはない。だが米アップルや中国・アリババ等を筆頭とするIT企業が中心の現在の世界の株式市場において、日本の現状はいかにもお粗末である。
  8. 90年以降に上場した日本企業で時価総額が1兆円を超えるIT企業は、ソフトバンク・グループや楽天など、ごく一部である。時価総額上位にはトヨタ、NTT、メガバンクなどの「旧来型」の大企業ばかりである。
  9. ここにきて「その国の名目GDPを市場全体の時価総額を超えると株価は割高」とする米ウォーレン・バフェットの「バフェット指標」が注目され始めている。東証一部の時価総額は名目GDPを大きく上回っている。23,000円到達後はさすがに急落模様とはなっているが、「コンピュータの全てが一流ではない」点は銘記すべきだろう。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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