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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

12/04号

『金融新時代。重み増すCDOの役割』
  1. 現天皇の31年4月の退位が正式に決定した。

    一連の決定が正式となる前から、平成29年末は、「平成の30年」を回顧する内容の記事が増えている。

    新しい年号が何になるのか知る由もないが、ミレニアムを含む平成の時代は、まさに激動の30年だった。

    「稼げる者は残り、そうでないなら退く」。

    ビジネスの当たり前の原理が銀行経営にも持ち込まれ、「護送船団方式」と呼ばれる「日本の銀行不沈神話」が崩壊した。

    平成30年という激動の時代の中でも指折りの大きな変化のひとつだった。
  2. 今から20年前の1997年11月17日、北海道拓殖銀行が破綻した。

    「銀行が倒産する」という、それまでの絵空事が現実となった。

    以降、大再編の2000年代へと続いていくが、日本の金融界は依然として大きな構造調整にもがいている。
  3. 現在進行中の金融改革は『フィンテック』と呼ばれる異種のものである。

    フィンテックの語源は

    Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。

    インターネット、スマホ、クラウド、ビッグデータ分析、人工知能の発達が、金融そのものを、既存の常識が通じない、大きな変化に巻き込んでいる。

    こうした「フィンテックの時代」では、モバイル市場が急拡大し、電子商取引の中国・アリババを先頭とする新興企業が急拡大する時代となった。

    モノやサービスと結んだ自動決済や、顧客データを使った

    新たなビジネスを切り拓くための能力・資本力が必要となってきたのだ。
  4. 既存の常識論に固執して、100行超が乱立する地銀・第二地銀の再編は遅れている。

    2000年以降の推移をみると、20005年前後は経営の体力がある銀行が、不良債権に苦しむ銀行と合併・統合する“救済型”が一般的だった。

    しかし近年は、中堅行が人口減などによる経営環境の厳しさに危機感を募らせて結集する流れになっている。
  5. 本テーマに関して、15年超前から「現代社会において地銀の使命は終わった」といい続けてきた。

    止めようもない国際金融の大きな変化の中で、金融庁主導による地銀の最終着地点は「3大メガバンクによる全地銀の系列化」だ。
  6. 「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備・統合」は、「マイナンバー制度の完成」および「国民の一人一銀行口座」にもつながる。

    税収に悩む日本国は、日本国民の資産をガラス張りにしたいのは明白である。
  7. 金融庁の本音は以下のようになろう。

    「今後、能力のない銀行は生き残れない。特に地銀の生き残りは不可能に近い」

    「少数精鋭体制にすることが急務。更なる吸収合併を勧奨する」

    「不要な人材は極力出向させ、コスト削減・体質改善を目指す」
  8. またぞろ英語の頭文字を使った新語の登場だが、CDOとは(Chief Digital Officer=チーフ・デジタル・オフィサー)の略である。

    もはや“攻めの金融”しか残れない。

    その尖兵がデジタル戦略であり、CDOとはそのリーダーである。

    いわゆる銀行屋ではなく、IT関連業種からのトラバーユ組がほとんどである。
  9. 現状の地域金融機関=地銀・第二地銀に関していえば、いかなる主義主張があろうとも、結局は自己に都合のいい理屈にしか過ぎない。

    ITの更なる進捗で、営業環境は悪くはなっても、よくはならない。

    時代の大きな流れの中で、“見切り時”を見定める時期だろう。

    残念だが、致し方ない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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