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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

2/13号

『特集:大々的な調整局面の幕開けか、絶好の押し目か』
  1. 2月2日(金)の日経朝刊の注目記事。その1。「アップル売上高最高」「販売台数は減」との記事。17年10~12月の売上高は前年同期比13%増の883億㌦(約9兆6500億円)で四半期ベースで過去最高。1台10万円を超える新スマホ「iPhoneX(テン)」が貢献した結果である。ただ販売台数は前年比減少でX(テン)の減速が目立つ。
  2. 注目記事のその2。米IDCの調査による「世界のスマホの出荷台数が2017年に初めて減少」との記事。スマホ市場は2007年に米アップルが「iPhone 」を発売して以来成長を続けてきたが、15億台を目前に頭打ちとなった。新機種が発売されても目新しい機能が乏しく、米国や中国では買い替えサイクルが長期化している。
  3. こうした一連の「米IT4強に陰り」の記事が出た同日のNY市場。NYダウが急落、過去第6位の665㌦安。そして週明けには過去最大の1175㌦の暴落。単なる偶然なのか、はたまた一部で密やかに一連の下落の仕掛けがなされたのか。いずれにしても“ぬるま湯”の上昇相場に、凍る直前の冷水が浴びせられる結果となった。
  4. こうした突発的な変動が起きると、マスコミでは“後追い三味線=後付理由”の乱打が始まる。やたら細かい数字を並び立て、“犯人探し”に躍起となる。ここまでの株式市場は「株価は心配の壁をよじ登る」という格言、つまりは「懸念材料があった方が上昇相場が続く」という、「否定的な材料をも買い材料にする」自己本位なスタンスで「買い先行」戦略を採ってきた。それがぶっ飛ばされただけのことである。
  5. コンピュータ頼りの自動取引もこうした“突発的な”局面では機能しない。無機質にゲーム感覚の相場構築で、相場で儲けた・損したという生々しい感覚がないまま、ひたすら数字だけを追いかける。一旦そうした状況になってしまえば、人間が考えるところの“とんでもないこと”になる。それが2日と5日のNYの株式市場だった。
  6. いつの世も、相場に関わる者にとって週末は“鬼門”である。金曜日は「週末くらいはユックリ休みたい」「リスクを少々減らしとくか」になり、土日の休日は冷静になって自分のポジションを判断し始める。市場が閉まっており、何もできないから尚更“危ねぇな”という感覚が増幅し始める。人間はあくまで人間なのである。
  7. さて今後の相場はどうなるか。とりあえずは「頭は打った」と見るのが妥当なところだろう。「スマホ時代」から「AI時代」への転換期であり、新たな買い材料が見当たらない。「押し目は買い」ではなく「戻りは売り」となったとみるのが順当なようだ。
  8. 世界の株価の時価総額は過去最高の86兆5300億㌦(9800兆円)と、世界の名目国内総生産(GDP)の78兆㌦(17年推計値)の約110%の水準になった。市場全体の時価総額をGDPで割った指標は、米投資家ウォーレン・バフェットが重要視する投資尺度。結局、とりあえずは上記の数字が完全に修正されるまで下落するしかないのだろう。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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