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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

3/26号

『特集:崩れ始めた世界のパワーバランス -世界戦争のリスク-』
  1. 日本が森友問題に大揺れとなったこの3月、一方で世界情勢が大きく動き始めた。中国の習近平国家主席、およびロシアのプーチン大統領が長期にわたる強権支配を固めた。両者は共に「歴史的な大国の復興」を掲げ、欧米中心の秩序に挑み、地政学的な野心を露わにし始めた。かたや世界の警察(であるべきorであった)米国も「米国第一主義」を掲げ、中露に一歩も引かない構えである。
  2. 三国共に強大な軍事力を背景に、それぞれの主張を曲げようとしない。中国は南シナ海での領有権を強硬に主張し、ロシアはウクライナ領クリミア半島を併合して、国境を武力で侵した。負けずとトランプ政権も核兵器重視の転換を表明する。かくして「自国利益が優先するためには何でもあり」の様相を呈し始めた。今回の混乱は、IT中心の“産業革命”を交えて、イデオロギーで二分された冷戦時代よりも複雑さを増している。
  3. 中国は、欧米の市場を自国に向かせておく必要から、地政学的な野望は抑え込んできた。しかしAI時代を迎える中で、自国産業に自信を深め、世界の大国・米国に対して、イデオロギーの面でも地政学的な面でも、挑戦する姿勢を強めている。
  4. この背景として、ここ30年の米国では過去30年間、大半の労働者の実質賃金が横ばいか、あるいは減少してきた点が大きく影響している。米国が主張する「グローバル化と自由貿易の推進が生活をより豊かにするという考え方」に信頼を失ってしまったのだ。
  5. その狭間に登場したのがトランプという異端の指導者だった。トランプは、歴代の米大統領のように、自由主義的な国際主義を踏襲せず、海外に民主主義を広めるような努力はしていない。あろうことか「(時代に逆行する)米国第一主義」を掲げた。
  6. こうした状況の中で中国は、「米国主導の世界秩序はもう時代に合わなくなっている」と主張し始め 、自国の新たな独裁主義を、中国に適した統治方法というだけでなく、欧米の民主主義に代わる世界的な統治モデルとして提唱しようとしている。それが「一帯一路」運動という、ある意味で荒唐無稽な計画となって表れている。
  7. 強権支配をバックにした国家主義は、人権などへの配慮を後回しにし、スピード感のある国家運営を演出し易い。だが独裁が招く誤りは歯止めが効かず、独善的な指導者の判断ミスがもたらす災危は格段に大きくなる。現実にロシア経済は停滞に陥り、中国では過剰債務を抱え込む。今後の世界は、いつ爆発するか分からない爆弾を抱え込む。
  8. かくして(民主主義にとっては異質の)保護主義と国家主義に転じた米国VS共産主義・中露という新たな組み合わせは、「ある日突然の暴発リスク」を秘める。昨年完読した故船戸与一の遺作「満州国演義」が述べる如く、第二次世界大戦直前の日本が現在の中露の姿だ。民主政治&自由主義経済試練の時。トランプという異端な米大統領作・演出の“世界大戦”も否定できない。トランプ頼みに見える日本の方策は正しいのだろうか。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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