■今週の市場展望
著者:青柳孝直
4/09号
『特集:「ITバブル崩壊」の様相。米株式、完全に頭打ち』
- 3月後半のNY株式は2008年10月のリーマンショック以来の1400㌦を超える大幅下げとなった。米中の貿易摩擦から、通商政策の世界的な抗争激化の懸念が出たためだが、根幹の理由はフェイスブック(F)、アマゾン・ドット・コム(A)、ネットフリックス(N)、グーグル(G)の「FANG」のビジネスモデルの欠陥が露呈したからだろう。
- この3月、フェイスブックが保有する5千万人超のユーザー情報が不正に外部に流出したことが明らかとなった。フェイスブック側では、「自社の管理が及ばない第三者の規則違反」だと反論してはいるが、知らぬ間に個人情報が悪用される「プラットフォーム・ベースの管理のもろさ」が露呈することになった。
- 基本的な流れは、フェイスブックを通じて(第三者の)外部企業のアプリサービスに登録すると、同アプリを通じてユーザー情報が吸い上げられる。多くのユーザーは自己情報が吸い上げられた事実に気が付かないし、仮に外部企業が悪用しても防ぎようがない。こうした構図は「FANG」等の他のIT企業も同様である。
- 一連のIT企業のビジネスモデルは「まずユーザーを画面に釘付けにする」「ユーザーの行動データを収集する」「一連のユーザー情報を広告主に高額で売りつける」を基本にしている。ベースにあるのは「利益追求第一主義」であり、「楽観的・自己陶酔」的な信念だ。このビジネスモデルの欠陥は、フェイスブックの「約4900億㌦の表面的な価値VS有形資産が約140億㌦」という、実に歪な財務状況にも表れている。
- トランプ現米大統領はツイッターで「米国中の街が傷つき、仕事が失われている」と吠え、「零細の小売業者を窮地に追いやっているのは一連のIT企業だ」として、課税強化等、IT企業への攻撃姿勢を明確にしている。だがこうした一連の動きも、根幹の問題を解決しようとする意志はなく、中間選挙を控えた人気取り政策の一環に過ぎない。
- 先進テクノロジーは既存の社会にギャップを生む。いわゆる“革命”だ。だがこれから先の世界でも、“次なる”テクノロジーが先鞭を切るのは間違いない。従って、仮に「FANG」が廃れても、新たな感性や感覚を持った企業家たちが「次を狙って」動いていく。トランプがいくら吠えようが、規制をかけようが、効果は一時的である。
- こうした栄枯盛衰を横目に、不変なのは相場の世界だ。今回の上昇相場でも2009年3月の6,469㌦×3倍=19,407㌦を超えたが、6,469㌦×5倍=32,345㌦は絶望的だ。99年8月には90年10月の2,344㌦×5=11,720㌦を超えたが、2009年に向け6,469㌦まで下落している。結局、底値から3倍以上は、やはり“神の領域”なのだ。
- 昨今のアルゴリズム(自動)取引や超高速取引(HTP)等のコンピュータ売買は、株価の歪みを狙う一般投資家を市場から締め出した。だがAIが如何に進歩しようと、大自然には敵わない。かくしてエンドレスな上昇に見えた米株式相場も、幕引き模様である。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
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FAX:03-5573-4857
書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円