• ホーム
  • コラム
  • 4/06号 特集:大塚家具の「親子げんか」に見る問題点

コラム

コラム一覧へ

■今週の市場展望

著者:青柳孝直

4/06号

『特集:大塚家具の「親子げんか」に見る問題点』
  1. 東京・江東区にあるIDC(International Design Center)大塚家具。完成した当初から高級家具を扱うことで有名だった。単品だけを買うスタンスは余り好まれず、家具一式を買うよう誘導された。従来の家具屋とは違う雰囲気だった。会員になることをしきりに勧められた。少々しついこい感じだった。次に行こうという気にならなかった。
  2. 家具に関しては関心が薄く、詳しく市場調査もしたことがないが、相対にあるのがニトリと思う。高級感はないにしても、価格帯がいわゆるリーズナブルで、とにかく好きに選ばせてくれるのがいい。特価品も用意されており、“お得感”もある“家具のスーパー”といった雰囲気である。
  3. その大塚家具の「父と娘の親子げんか」が注目を集めた。会員制による高価格販売を掲げる父と、カジュアル路線を志向する娘。「(家具屋の娘=)かぐや姫の乱」と揶揄された「親子げんか」は、3月27日の臨時株主総会で、娘(大塚久美子社長)が父(大塚勝久会長)に“勝利”し、一応の決着を見た。
  4. こうした「親子げんか」が注目されたのは理由があった。「価格・顧客戦略」と「事業継承の行方」が注視されたからである。内需企業は「限られた市場を深耕する戦略」を最大の関心事とし、同族企業は「事業継承の行方に“明日は我が身”」との危機感を募らせた。
  5. ここ数年、価格志向が薄れる中で、顧客獲得の新たな仕組み作りに腐心する企業は多い。大塚家具の場合、最近勢力を広げているニトリのような幅広い顧客層獲得は至上命令だった。会員制による方式は、新設住宅着工数が頭打ちとなる中で、時代にそぐわないシステムになり始めていた。
  6. 同族企業は結束力がある一方で、ほころびが出始めるとやっかいなことになる。互いに批判を繰り返す父と娘の確執は先鋭化し、どちらも引くに引けなくなった。複数の社外取締役や社外監査役も無力だったために決まったこともすぐに覆される。企業統治の制度があっても有名無実だった。
  7. 最大の争点は「経営を立て直すための健全な企業統治の再構築」には違いない。経営と資本が一体化した同族企業では常に矛盾を抱える。一応の決着をみた親子げんかも、根本的な解決にはほど遠い。それは大塚家具が特異なのではなく、多くの同族企業の抱える深刻な問題ではある。
  8. かくして大塚家具は、娘・久美子氏の社長続投、創業者・父・勝久氏は会長を退任することになった。ただ株式の約18%を保有する勝久氏は筆頭株主として残るため、父と娘の対立の構図は続いていく。簡単に終わりそうにない。「親子げんか第二幕」、さしずめ「父の逆襲」の可能性は高いと言わざるを得ない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


書籍紹介

コラム一覧へ

ページの先頭へ戻る