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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

2/06号

『特集:何を今更…日米自動車摩擦再燃やら為替論争やら…』
  1. 「我々には永遠の同盟国も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益だけだ」。これは大英帝国が栄華を極めていた1884年、当時の首相第3代パーマストン子爵の言葉である。そして自国の外交政策について「英国は独自の道を歩むだけの強さと影響力がある」と。
  2. トランプ新大統領がパーマストンに倣っているとは考え難い。ただ両人には自国を絶対とし、他国を頓着しない点では共通している。現在の国際経済体制は元々が米国が設計したものである。だが新大統領は「米国第一主義」という懐古主義を最大のテーマにした。言葉を変えれば、全盛時の英国と同様に「米国孤立主義」打ち出したことになる。
  3. そして「米国第一主義」を宣言すると共に「米国を再び偉大にする」政策をも打ち出した。ただこの一連の政策の中身と言えば、経済ナショナリズム、反グローバル主義、反移民、イスラム過激主義の徹底拒否、米国の利益を優先するゼロサム志向であり、結局は直感と偏見の寄せ集めでしかないように見える。
  4. 1月23日、新大統領は自動車貿易を巡り、日本を名指しして「不公平だ」と批判した。米国での現地生産が進む現状を無視(or知らない振りを)し、1980年代に逆戻りしたような批判をする背景には、フォードやGMなどの米大手自動車企業の影がちらつく。
  5. 日本のメーカーが小型車の輸出攻勢をかけた80年代と異なり、日系企業の米国生産が進んでいる。米国内で販売する車のうち、北米での現地生産の割合はトヨタが7割、日産が8割、ホンダは9割とされている。また日本国内へのアメ車の輸入に関しては関税がゼロなのに、米国は日本からの輸入車には2.5%の関税を課している。
  6. 日本自動車輸入組合(JAIA)に拠れば、16年の外国メーカー車の日本での販売台数は前年比3.4%増の29万5千台。登録車に占めるシェアは9.1%で10%が視野に入っている。その中で、16年にはフォードが日本から撤退、GMの販売も1300台程度で、メルセデス・ベンツ、BMW、VW、アウディ等、独メーカーのほぼ独占状態となっている。
  7. 要は燃費が悪く、小回りが効かないアメ車は狭い日本には合わず、人気がないということであり、結局は米国メーカーの企業努力が足らないという点については論を待たない。結局はないないづくしの米国の日本への“いちゃもん”に過ぎないのだ。
  8. 為替についての発言は余りに馬鹿げている。米国は伝統的に「強いドル」政策を基本としてきた。で、新大統領は「強いドル政策を採る」と宣言する一方で、「ドルは強すぎる」などと言い放つ。基軸通貨国の大統領が為替動向に関する発言をすれば市場はどう反応するか、ご存じないのか?そんなアドバイスをする側近もいないのか?
  9. 1月20日に大統領に就任して以降の連日の過激なパフォーマンスは、世界が最大限に耐えてくれるギリギリの部分を確認する動きのようには見える。だが余りに単純・稚拙で、基本的知識の全くない、単なる“ど素人の一発屋”にも見えてしまうが…
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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