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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

2/27号

『特集:「日本政府は為替管理をしていない」のか?』
  1. トランプ新政権になって1カ月が経過した。人事問題・外交問題・経済問題など、難問山積、今後はどうなっていくのか、全く見えていない。但し問題視されている為替については、短期はともかく、長期的にはある程度は方向を判断することが可能である。
  2. よい機会なので、チャートをベースにした為替分析について復習してみたい。為替のチャートには、日足・週足・月足そして年足が存在する。チャートとは、日毎・週毎・月毎、そして年毎に出てくる高値・安値のデータを組成してできる“図面”である。
  3. 年足???と言われるかもしれない。実はこれが重要なポイントである。勝率9割を誇った伝説の相場師・W.D.ギャンは「見過ごされがちだが、年足が特に重要である」と言っている。そして「最低100本の足が必要である」と。
  4. 為替が変動相場制に移行するのは1973年。つまりは「100本の足ができるのは2073年」ということになる。為替の動向が今一つ明確に分析できないのは、為替の年足が40本を超えたばかりの“未熟な相場である”からに相違ないのである。
  5. 日本にとっての基本の為替は何と言ってもドル・円である。米国が世界経済の中心にいる限り、その重要性は不変である。創刊して20年超になった「週刊・びー・だぶりゅー・れぽーと」で毎週分析を繰り返してきたが、総体的に言えば「360円から始まったドル円は5分の1の72円(実際は75円)にほぼ到達し、3分の1の120円に戻った」。なんのかのと言いつつ、まずは理詰めな動きをしていることになる。
  6. 別にトランプ大統領の肩を持つわけでないが、日本の為替政策は「ドル円為替を円安誘導してきた」歴史を持つ。安倍首相や麻生財務相を中心に頑強に否定しているが、アベノミクスの大きな柱は「異次元緩和をベースにした円安誘導」だったのはご存じの通り。
  7. これもギャンの言い様だが、「相場という大自然を人間の力で抑え込むことはできない」のであって、「円安だと日本が有利(国益)、円高だと日本が不利(国損)」だから「何がなんでも円安」という論理は、輸出と輸入で成り立つ現在の世界経済環境において、完全に時代遅れの考えだと思う。たとえ日本が輸出立国であったとしても。
  8. 参考程度にドル円の理論値を申し上げれば、日米長期金利差とドル円の妥当値は2001年以降では106円。購買力平価(生産者物価ベース、1973年基準)は97円。市場が期待している米国の巨額の財政出動が期待外れになったり、欧州の政治リスクが高まったりすれば、円の急騰=100円割れは十分にあり得る。
  9. 中期的な状況を申し上げれば、昨年9月の安値100.09円からトランプ当選直後の高値118.65円の3分の1戻しが112.47円。現状は113円を中心にした膠着状態。トランプ政権が不安定な中、大枠の節目の値段を抑えた上でコスト計算をしておけば、とりあえずリスクは軽減できる。近代経営の基本中の基本。まことに厄介だが、致し方ない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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