• ホーム
  • コラム
  • 3/06号 特集:北朝鮮の「国家の犯罪」は、断末魔のあがきか

コラム

コラム一覧へ

■今週の市場展望

著者:青柳孝直

3/06号

『特集:北朝鮮の「国家の犯罪」は、断末魔のあがきか』
  1. 先代・金正日総書記の誕生日を祝う「光明星節」を16日に控えた2月13日、北朝鮮がまたぞろ世界を騒がす事件を起こした。マレーシアの首都クアラルンプール国際空港での金正男暗殺事件。よりにもよって“監視カメラ天国”の国際空港での犯行であり、素人を雇って猛毒VXで暗殺という、安直なドラマ仕立ての殺人行為だった。
  2. 北朝鮮は世界初の共産主義王朝であり、従って血縁者は後継者になりうる。金正男氏は王族や大富豪の子息ばかりが集まるスイスの名門「ル・ロゼ」の寄宿舎で英才教育を受けており、後継者たりうる存在だった。
  3. ただ権力に恋々とせず、ひたすら世界のテーマパークを回遊する“男はつらいよ・寅さん”スタイルが、世界のマスコミに面白おかしく、頻繁に取り上げられていた。そしてまた「現北朝鮮の国家システムに批判的だった」ことも報道されていた。
  4. 金正恩現委員長は、金正男氏と腹違いの兄弟であり、母親が在日朝鮮人というハンディキャップがあった。後継者争いでは、(本来なら)全く勝ち目がなかった。結果として、強力なライバルを排除し、権力基盤を強固なものしようと画策したに相違ない。
  5. だが今回の暗殺が、世界中に根堀り葉堀り報道されるような舞台での決行であり、あまりに杜撰だった。金正恩委員長の若さゆえのあせりか….今回の事件が起きて、昨年の晩夏に完読した故船戸与一氏の「満洲国演義」のポイントを読み返してみた。現北朝鮮に、満洲国を立ち上げた当時の日本の“狂気やあせり”を感じたからである。
  6. 同「満洲国演義」では、登場人物にゲーテの「ファウスト」から「国家を創り上げるのは男の最高の浪漫だ」と述べさせる。正常な国家経営の経験不足と掲げた理想と現実の乖離。世界に伍する手段もなく、また手段を模索することもなく、核やミサイルを最大の外交手段とする北朝鮮。世界は「暴挙」や「暴走」と非難を浴び続けている。
  7. 北朝鮮の場合、根源の理由は明確になっている。国境が直線で引かれている場合に紛争は起こり易い。それは民族のありようを無視して、統治する国の都合で直線が引かれるからである。国境をまたいで同じ部族が存在する、二重国家になっている。結果的に民族意識が政治的な思想に昇華され、権力との抗争を必然的にさせるからである。
  8. 今後、北朝鮮問題解決にはどうしたらいいのか。答えは単純明快である。現体制を転覆させ、穏健な安全保障政策を持つ政権に移せばいい。ではどう実現するのか。巷間では「ロシア」が鍵を握るやに噂されている。あのプーチンなら、との見方ではある。
  9. 金日成国家主席体制が誕生して70年が経過し、三代目の時代となり、組織に金属疲労が目立ち、金一族の血を血で洗う争いが始まった。北朝鮮は断末魔のあがきをしているようにしか見えない。これまでの世界の歴史を考えれば「北朝鮮のリセットの時期は近い」それも「ある日突然のリセット(=崩壊)近し」と思わざるを得ない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


書籍紹介

コラム一覧へ

ページの先頭へ戻る