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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

5/22号

『特集:ラジオの時間』
  1. 大相撲5月場所が始まった。浅草の三社祭りに重なるこの時期は、梅雨前の暑くもなく寒くもなく、隅田川に吹く風に新緑の匂いがする、年内最高の時期である。だが大相撲の予約は半年前に完売で、当日券が発売される午前8時には長い行列ができ、両国国技館は連日札止めの盛況である。19年振りの日本人横綱誕生による人気に違いないが、この相撲人気、世相を反映しているようにも思う。
  2. 最近のTV番組の低俗振りは異常である。地上波とBSに分別された結果、地上波はお笑い芸人を中心として、エログロを売り物にする2時間程度の番組に席捲されている。CMが乱打される中、ただひたすら下品な笑いを狙う番組の中で、無為に時間が流れていく。この傾向は、今年のNHKの大河ドラマの大不作によって決定的になった。
  3. スポーツ番組も、民放がCMを乱打することによって興味が失せ、スポーツそのものの面白さも消すようになった。金看板の巨人戦が冴えないのも、ゴルフ番組が不人気なのも、全てはCMの乱打が原因である。特に最近の女子ゴルフの中継は、女子プロのボディコンシャスな姿を中心に映し出す番組となり、地上波のエログロ路線を踏襲している。
  4. 振り返って日本古来の相撲はあくまで「儀式の世界」であり、時代を超えて頑にルールを守っている。土俵という“土&俵”が舞台になり、和装の呼び出しがいて、行司がいて、大銀杏(ちょんまげ)+褌という前時代的な格好から始まり、20秒前後で勝負がつく前に、仕切りや塩撒きなどと、全く無駄と思える所作を淡々と続ける。こうした“伝統の(先を急がない)ゆったり感”が見る者を安心させるのである。
  5. 現代人がなぜ以前に増して全てに急ぐようになったのか。それは21世紀に入って爆発的に進捗したIT(情報技術)が要因だろう。日々進歩する人工知能(AI)が全てをリードし始めている。その尖兵がスマホ。ある意味「スマホ万能時代」である。
  6. 2020年は東京五輪の年。勢いのまま、その2020年までには自動運転車が定着する勢いである。自動運転と言っても以下の「レベル3」程度あたりか。「レベル1」加減速やハンドル操作のいずれかをコンピュターに任せる。「レベル2」加減速+ハンドル操作をコンピュータが行う。「レベル3」主としてAIが運転する。但し状況に応じて手動可能。「レベル4」条件限定版だが人が運転に関与しない。「レベル5」全て自動運転。
  7. 次に大きなテーマはフィンテック=金融とITの融合。スマホに専用アプリを搭載すれば「金融窓口」を持って歩いているようなもの。つまりは支店不要の時代が来る。金融機関に「装置産業」から「技術産業」への転換が求められる。いくつの銀行が残れるか。
  8. 好むと好まざると、これまで以上に即断即決の時代がくる。油断すれば時代に置いていかれる。だがこうした時代だから尚更、ゆっくり時代を眺めてみたい。最近BGM代わりにつけていたTV画面を消し、ラジオを流すようにした。意外にゆったりできますよ。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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