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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

6/12号

『特集:たがが銀座、されど銀座。そして残酷なまでの銀座』
  1. 2020年の東京五輪に向け、日本を代表する商業エリア・銀座の変貌が最終コーナに差し掛かっている。JR有楽町駅前のイトシアを出発点とし、晴海通り沿いに銀座→築地→台場と流れる一連のルートは、華麗にそして豪華絢爛な仕上がりを見せている。もはや日本の銀座ではなく、「世界屈指の商業エリア銀座」としての体裁を整えている。
  2. 昨年3月末に「東急プラザ銀座」、9月に「銀座プレイス」、そして今年の4月20日に「GINZA SIX」が完成し、銀座全体が完全に落ち着いた。中国からの爆買いも終了、「大人の街」に回帰した。と言っても、あくまで「裕福な女性の街」としてではあるが。
  3. 団塊の世代が銀座を意識するのは、ソニービルの完成からだった。「ソニービルで待ち合わせ」は“(時代の最先端を行く)カッコよさ”の代名詞ともなった。江戸から続く繁華街でも、老舗がけん引する日本橋に対し、日本初の鉄道で横浜港と結ばれ海外からの玄関口新橋駅至近の銀座は、戦前から新参者が新風俗を持ち込む街として発展した。
  4. 80年代にはOL層を狙い隣接する有楽町にマリオンが完成、西武百貨店が出店。90年代になって地価がバブル期の3分の1に下がると経営に行き詰まった個人経営の店の跡などに海外高級ブランドが店を構えた。ドラッグストアやファストファッションなどの低価格店も乗り込むようになる。
  5. 2000年前後からは、団塊ジュニア向けに、丸井や東急ハンズなど、渋谷で成長してきた店やブランドが相次いで進出。近年ではインバウンドの急増で、外国人観光客を意識した店が目立つようになっている。来るものあれば、去るものあり。一世を風靡した西武百貨店は7年前に撤退、ソニービルも今年3月に閉館した。「時代の主役を引き付ける街」「廃れたとあれば即刻駆逐する街」、それが銀座である。
  6. 余りご記憶にないだろうが、ソニービルの真向かいが東芝のビルだった。80年代には、両巨頭ここにありと、どっかりした存在感を見せていた。一旦衰えを見せれば、哀しいまでにすっぱりと消し去る街、それがウツクシき銀座の実体である。
  7. だがソニーは、平井一夫社長が2012年に就任して以降、エロクトロニクス分野をはじめとして、金融やエンタテイメントと共にバランスのよい収益体制=「リカーリング・モデル」が機能し始め、18年3月期には20年ぶりの最高益が視野に入っている。結果として4丁目の銀座プレイスにショールームを構える。往年のソニー復活か!?
  8. 一方の東芝は、構造改革が行き詰まり、半導体メモリー事業の売却も難航し、崖っぷちの状態が続いている。古参型の経営者が居座り「国営企業たる東芝」を標榜するだけで、打つ手なしの状態が続いている。「光る光る東芝、回る回る東芝」。馴染んだCMソングが空しく聞こえる。考えてみれば銀座という虚飾の街は、結局は典型的な肉食系なのだ。
  9. 銀座に行き始めて40年。たかが銀座、されど銀座。そして残酷なるかな銀座。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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