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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

7/03号

『特集:AI(人工知能)が駆逐する「規格&規格外」という概念』
  1. 自分の学生時代、同じ大学に5万人の学生が在籍していた。JR高田の馬場(通称:馬場)の街を闊歩するのはほぼ学生だった。当時は学生運動の最盛期だったから、ロックアウト(キャンパス締め出し)も日常茶飯。馬場は“学生とは名ばかり”のアウトローでひしめいていた。パチンコ・麻雀ばかりでなく、囲碁、将棋も盛んだった。
  2. 自分の“麻雀の師匠”に出会ったのは、キャンパス至近では唯一のパチンコ屋だった。当時のパチンコは、手動式&(椅子なし)立ち型&チューリップ型で、喫煙あり(灰皿付き)の、もうもうとたばこの煙が立ち込める“霞が関”状態が常態化していた。
  3. その日の師匠は、ドル箱(大入り箱)4台を重ね、黙々と打ち込んでいた。球を入れる指技はまさに名人芸。余りに鮮やか。で、側でチラチラ観ていると突然、「代わるよ、オレは2階でメシ」。パチンコ屋の2階は天丼が上手いが高価だと評判の蕎麦屋だった。
  4. 30分ばかりでタバコ20箱分=2カートンの戦果。ちょい飲りのほろ酔いで、爪楊枝を口にしながら蕎麦屋から帰った師匠は、これも持ってけよと、大きな袋からインスタントラメーンを10個ばかり“お土産”にくれた。“オレは商学部のS。住まいは吉祥寺”。
  5. ってことで、それから以降、キャンパスに徒歩5分の自分の下宿が、通学に不便(片道1時間半)なSの別宅となっていった。と同時にSは、ダバコやインスタントラーメンや缶詰、飲み物類の(パチンコ屋経由の)食糧調達係となった。
  6. そのSは、パチンコばかりでなく、麻雀や囲碁や将棋で、相応の実力者と高額金を賭してやるセミプロだった。ヘンなヤツが多いのが伝統のワセダでも「規格外のヘンなヤツ」だった。だがそのヘンなヤツは、暇があると「定石集」を読み漁っていた。「将棋や囲碁には定石がある」「コイツを頭にシッカリ叩き込まないと、10~20手先が読めない」。
  7. 最近では頻繁に「規格外」という表現が使われる。だが「規格外」という表現そのものが陳腐化し始めている。AI(人工知能)の登場で、人間が想定した「規格」をことごとく木端微塵にし始めている。つまりは、人間の想定した「規格」さえマスターしないまま、異例な事象を「規格外」と一括りし、放置しておける時代ではなくなったのだ。
  8. プロ将棋で14歳の少年の29連勝、卓球・13歳の少年の世界ランク入り、同じく卓球17歳の少女たち(ダブルス)の金メダル獲得、陸上男子短距離での18歳の若者の日本選手権100・200米制覇、プロゴルフ松山英樹の世界制覇に近い成績は、従来の考え方では「規格外」。ただ明確なのは、もはや日本という狭い世界を相手にしていない点だ。
  9. AIが世界制覇を目論む時代。全ての分野で「世界標準」がテーマになり、「世界標準」が人間のクリアすべき第一歩となった。昨今、日本の10代の少年少女たちの活躍が目立ち、規格内の大人たちは大騒ぎしている。一方で、彼らの冷静さが目立つ。彼らは、とりあえず「世界標準がどこにあるのか」を掴んだ。それだけのことなのである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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