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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

8/21号

『特集:最終局面を迎えたアベノミクス』
  1. トランプ米大統領の北朝鮮への“この小僧がっ!!”型の「口撃」が断続的に続いている。米国が本当に軍事作戦にカジを切るのか。北朝鮮の軍事能力の増強が確実になる中で、トランプVS北朝鮮のTV画面上での激しい応酬が、世界の市場を揺さぶっている。
  2. 今回の事態と唯一比較できる事象は“キューバ危機”だろう。1962年10月、旧ソ連によるキューバでの核ミサイル基地の建設をきっかけに米ソは核戦争手前までいった。今回の事象も、背後にロシア&中国がいるのも間違いなく、結局は同じ構図だ。
  3. そうした中でNYダウが22000㌦近辺の高値に張り付いている。AI中心の世の中に移行する中で株式市場は、米IT・ハイテク業界の好調が続き「人手不足が2050年まで続き、省力化やITへの投資を促す」との(安直な)期待感に浸っている。
  4. 当然、ITバブル崩壊のリスクは健在である。来るべきAI全盛時代に勝ち残るためには、従業員1人あたりの企業価値や収益が大きいなど、賃金上昇の圧力に屈しない体質を持つ企業に限られる。「何でもかでも、買っておけばいい」という論理にはならない。
  5. 市場では「ビッグ・ショート」という単語が使われ始めた。米ベストセラーの「ザ・ビッグ・ショート(邦題:世紀の空売り)」から採られた言い回しだが、「市場の平穏がいつまでも続くはずがない」との懐疑心が潜んでいるのもまた事実である。
  6. コンピュター化が強烈に進捗した結果、世界の金融がAI任せへとカジを切って久しい。結果的にAIは、従来の現場担当者=人間を金融機関から徐々に駆逐し、市場の「マーケット・メーキング機能」が顕著に低下した。現在のAI中心の金融市場は、行くときは情け容赦なく、(地獄の果てまで)トコトン行く、のである。
  7. 8月3日、改造内閣を発足させた安倍晋三首相は「4年間のアベノミクスで雇用は200万人近く増え、正社員の有効求人倍率は1倍を超えた」。そして「しかしまだまだすべきことがある」とアベノミクス加速を訴えた。
  8. だが、繰り出した政策と成果の関係は判然としていない。3本の矢、新3本の矢、1億総活躍、働き方改革、そして人づくり革命。どの政策がいつ、何に、どう効いたのか。結果良ければれば全てよし、では済まされない。最終的には、AIの起こす未曽有の大混乱に、如何に冷静沈着に対応するかが問題なのである。一国の大将は、平穏な時には、いるのかいないのか、大石内蔵助型昼行燈(ひるあんどん)でも構わない。
  9. 戦後の日本で宰相の供給源は、吉田茂、岸信介、池田勇人、佐藤栄作などの官僚機構だった。やがて自民党が力をつけ、田中角栄や竹下登などの派閥の領袖が内閣を率いるようになった。近年は安倍晋三、福田康夫、麻生太郎など「世襲宰相」でしのいでいる。

    トランプVS北朝鮮の対立が発端となり、理想論・机上の空論が機能しない大混乱が起きる可能性は高い。大異変が起きた時、何が、そして誰が必要なのかが分かる気がする。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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