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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

9/25号

『特集:アップルの高級路線に陰り』
  1. 9月12日、米アップルは11万円台からなるスマートフォン「iPhone」の最上位機種「X(テン)」を発表した。第一印象は、とにかく高価だという点。スマホは2007年の誕生から10年が経過し、市場成熟化が言われる中、自信満々の高価格が注目されている。
  2. 「ウンドウズ95」発売が起爆剤だったパソコン市場は、その後16年でピークを迎えた。スマホは10年を経過し、けん引役だった中国が今年初めて減少に転じるなど、市場では“ピーク”を打ったとの見方も徐々に広がっている。
  3. 創業者スティーブ・ジョブズ亡き後、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、腕時計端末、決済、定額音楽配信など矢継ぎ早な多角化に成功し、アプリ市場での売り上げはグーグルの2倍で、サービスの売上高はアップル全体の16%に達している。
  4. だが売上高の5割以上占める主力商品のiPhoneに関してはここ数年横ばいになっている。機能向上が鈍化し、他のメーカーとの違いがなくなると、消費者は割安さ求めるようになる。この流れを食い止めようとアップルは、機能強化を活路としてきた。
  5. 今回の「X(テン)」はホームボタン廃止と顔認証導入、無線給電などの新機能を盛り込んだ。一般論から言えば、11万円の高価格の割には新機能に新鮮味はない。結局アピールする先は一般消費者ではなく、ブランド力を土台にした継続顧客の「忠誠心」となる。こうした“曖昧であやうい”戦略が継続するか否か。
  6. 一連のIT関連に疎い者にとっては、際限なく多機能化するスアホを使い切れないでいる。電話ができ、メールが簡単に打てれば大概の事が済む者は多いと思う。顔認証が絶対的に必要な機能なのか??アップルのマニアになって、一体何の得がある!?
  7. 確かにここ10年、スマホは生活を大きく変えた。情報源がインターネットになり、収集手段も会話から一家に1台のパソコン、そして1人1台のスマホになり、「こどもが親を通じて生きるすべを身に付けていく」という関係が崩れ去った。
  8. 最近では「卒婚(そつこん)」「卒母(そつはは)」などという新語が流行し、「卒業シリーズ」が累計250万部の大ヒットとなっている。スマホを中心にした新たな情報時代。まず「旦那から卒業」し、「子供からも卒業」しようとする“大波”が押し寄せる。
  9. いずれにしても、スマホは世界の市場に完全に成熟し、定着したと見るのが妥当なようである。ITに疎い者はつくづくと思う、これ以上“奇を衒う”機能が必要なのか。その(どうでもいい)機能を備えた高額の機種に追随する必要があるのか。

    アップルの手法を疑問視する動きが出始める中で、金融市場では「ITを中心とした米株高はバブルだ」との意見も出始めている。至極当然だろう。ではスマホ・ネクストは何か??最近では「自動運転車」が大々的にクローズアップされ始めている。スマホで十分潤ったアップル王国も、戦略を変えなければならないようである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
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TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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