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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

11/06号

『特集:現代政治家のいう「改革」の本質は何か』
  1. 10月22日の第48回衆院選挙の後、日本の世相はフラフラ揺らめいている。「なぜ解散する必要があったのか」を明確にしないまま、選択される政治家に明確な確信もなく、主義主張もないまま、“就職活動のような選挙戦”に、“ふっきれない何か”が燻り続けている。ここで整理しておかねばならないだろう。
  2. 日本人の「改革好き」は戦前、戦中、戦後を通して続いてきた。歴代のNHKの大河ドラマでも戦国時代の豊臣秀吉・徳川家康や、明治維新物等の、筋書きが分かっていても「改革」がテーマになっているものが好まれている。ある種の国民性だろう。
  3. 平成の30年間に関しても政治家は率先して「改革」を掲げた。小沢一郎は「守旧派」のいう名で、小泉純一郎は「抵抗勢力」という名で、民主党は「悪玉官僚」という名で、“政権奪取のための”標的をつくった。こうした延長線上に安倍政権も希望の党もある。
  4. 近代西欧政治は二つのタイプの人間を生み出した。「判断の責任を引き受ける個人=カリスマリーダー」と「生半可な知識を持つ個人=大衆」である。大衆は前近代的な社会的束縛から解放され自由になった反面、不安に苛まれるようになる。結果、自分達を心地よく守ってくれる「世界観」「疑似共同体」「強力なリーダー」を求めるようになった。
  5. 政治を生業にする職業政治家は、こうした大衆のニーズを利用するようになった。実現不可能な理想の未来を提示し、「改革気分」を煽れば、大衆がなびいたからである。「強いリーダーに縛られたい大衆と、そのニーズを利用する政治家」という構図である。
  6. 折しも「民の声を直接政治に反映する」ことを真髄とする“ポピュリズム”という世界的な風潮も、こうした流れを増長した。日本では「大衆迎合」と訳されているが、ポピュリズムそのものは民主主義の一面性であり、今更目新しいものではない。しかしプロの政治家は、「大衆に直接訴えて、既存の権力構造に外から挑戦する」流儀として、あたかも目新しい考え方のように強調した。
  7. 世の中には変えていいものと、変えてはいけないものがある。先人たちの長い営みの中で生成され、積み上げてられてきたものや、常識や習慣や制度には、一見不合理に映ったとしても何らかの意味を持つ重要なものが多く存在する。「改革」とうい名で、何でもかでも変えてはならないのである。
  8. いずれにしても「改革」という美辞麗句はまことに便利なキーワードではある。改革に失敗すれば、改革が足りなかったからだと言い訳し、もっと改革しろと言い易いからである。かくして選挙に勝たんがために、政権を奪取せんがために、「改革」と声高に叫び続けるに至っている。
  9. 「大衆を扇動すれば何とかなる」との論理が先行する中で、今回の衆院選挙での右往左往振りはひどかった。これまでの「数の論理」こそ真っ先に改革すべき点と思うが…
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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