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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

12/11号

『特集:金融新時代(2)。消える「銀行為替ディーラー」』
  1. 「平成31年4月30日にて平成時代が終わる」との正式発表があって1週間。ジワジワと時代の流れを感じる昨今である。新たな年号はどうなるかは全く聞こえてこないが、昭和生まれの人間が「明治時代を遠い時代」と捉えたように、名実ともに「昭和の時代が遠くなる」日が近くなっている。
  2. 西暦1989年から始まった平成時代だが、それを境に金融も大きく変化し始めた。1990年代に入ると世界的な金融自由化の波が押し寄せた。特に1995年の阪神大震災から以降は怒涛の大波だった。北海道拓殖銀行の倒産、山一證券の倒産と続き、以降は都市銀行、長信銀の統廃合となっていく。
  3. この流れは東京外為市場にも大きな変化をもたらした。日本の銀行と在日外銀が乱立する東京外為市場は、日本の銀行が三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の三行に集約されるのと並行して、スイス系銀行の全面撤退を先頭に、在日外銀の撤退が相次ぎ、米シティを最後に東京には在日外銀が皆無となった。
  4. 21世紀にはいって本格的なIT時代を迎え、東京市場と他の市場を区切る必要がなくなった。取引時間を限定しない中で、為替市場は世界中がランダムに出入りする世界になったのである。1980年代に米シティの「シティは24時間眠らない」とのキャッチコピーが評判となったが、まさに24時間どこでも為替取引が可能になった。
  5. 金融自由化路線の中で、個人が市場に参入できることになったことも市場の状況を一変させた。スマホの画面上で、自由に取引が可能になった。「個人の市場への直接の参加」が可能になったことで、銀行の介在は必要としなくなる。つまりは為替取引自体が銀行の専権事項ではなくなったのである。東京市場の実質上の参加者は上記3行になった結果、東京外為市場の(実質的な)空洞化現象が顕著になったのである。
  6. 現在の市場は、“小数点以下3桁”まで取引対象となる。「112.015-112.025」の表記である。つまりは1億㌦単位の「薄利多売」形式が益々顕著となっていく。結局は人間の手に負えない環境になった。現在は全てがコンピュータ任せのスタイルである。
  7. かくしてヴォイス時代の轟轟たる喧噪の中で活躍した銀行為替ディーラーは必要ない時代となった。時として東京外為市場として短資会社(為替ブローカー)の現場がTV画面上で映し出されることもあるが、単なる広報活動であり、実稼働していない。
  8. 1973年から始まった変動相場制は、始まってから50年は経っていない。「電話の声」の時代から画面上の無機質な時代へ。今から約25年前、依頼原稿で「声のない市場」とのタイトルで為替市場の未来予想図を描いた。あり得ない!と笑われた。今は昔の話である。「銀行為替ディーラー」が持て囃された時代は1980年代が頂点だった。もはや昭和時代の遺産であろう。懐かしくもあり、寂しくもある昨今である。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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