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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

12/18号

『特集:ビットコイン狂騒曲』
  1. 最近、株式の上昇と共に、ビットコインの急騰が騒がれている。まずビットコインとは何か。定義は「世界に1300以上あるとする仮想通貨ひとつ」となる。では仮想通貨は何か。「インターネット上で流通する通貨」である。そして1300種類以上ある仮想通貨の中で存在感が大きいのがビットコインある。12月初旬の時価総額は約2800億㌦(32兆円)と最大で、全体の6割強を占めるとされている。
  2. いいか悪いかは別にして、特徴としては以下の4点とされる。「全てデジタル情報で処理される」「改ざんやハッキングが難しく、安定性がある」「世界中で取引されている」「発行元がない分散型通貨である」
  3. では仮想通貨を入手するにはどうしたらいいか。「仮想通貨取引所に口座を開設して日本円と交換する」ことが前提条件。スマホ等で身分証明書を送付して本人確認ができれば、最短1日で開設できる。取引単位は1ビットコイン(BTC単位=12月8日現在では約160万円)。但し小数点以下の取引も可能。
  4. 国際的な業界団体である先物業協会(FIA)は12月6日、「裏付けとなる商品の透明性と規則が欠如している」と批判する書簡を米商品先物取引委員会(CFTC)に送付した。こうした不安感がある中で、このビットコイン、12月10日シカゴ・オプション取引所(CBOE)に先物商品として上場された。金融商品として認知されたことにはなる。
  5. 先物商品として上場されたことにより、これまでは「ビットコイン現物の売買だった」が、「空売りが可能になった」。但し乱高下が予想されることから、当初証拠金の比率は従来の33%から44%までに引き上げられている。
  6. 以上が現状のビットコインの現状だが、最大のポイントは「中央銀行が介在していない点」、そして「ビットコインの現物とは言っても、所詮はコンピュター上のあくまで仮想である」点だろう。冷静に考えてみればいかにも危うい。
  7. 背景にあるのは金融緩和後のカネ余り。世界中のカネ余りが株価の上昇をもたらし、乗り遅れた投資家が新たなリスク資産への不用意な傾斜が起きている。ビットコインはそうした流れの氷山の一角とも言える。
  8. ただここまでくれば「ビットコインは一連の(危険で無謀な)リスク資産の先頭である」可能性を秘める。ビットコインの乱高下が、07年のリーマン・ショックの住宅に絡んだ金融商品と同様に、市場全体に影響を及ぼす可能性は否定できない。
  9. NY株式は歴史的な高値に張り付いている。「買わなきゃ始まらない」との安易な雰囲気が続いている。NYの写真相場の日経平均も、23,000円前後をウロウロしている。世界中で(末期的な)狂想曲が流れている。ビットコイン相場は為替相場のようなスキムが完成された相場ではない。君子危うきに近寄らず。安易な参入は避けた方が賢明だろう。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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