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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

12/25号

『特集:ポスト平成を考える』
  1. 日経新聞最終面の名物コラム「私の履歴書」の12月は江夏豊。最初は(一時は)薬物中毒で廃人同然となった江夏の登場は、全くの場違いじゃないか、と最初はいぶかった。だがゴテゴテの浪花の快男児(怪男児?)江夏の物語は、日毎に面白くなっている。
  2. 特に入団2年目から6年間の大活躍は、コンピュータ管理型の現代野球と異なり、まずは破滅型・酷使の残酷物語。1年目の1967年(昭和42年)は12勝13敗、投球回数230回3分の1、奪三振は225個。防御率2.74。
  3. 2年目の1968年は49試合に登板、37試合に先発し、8完封を含む26完投、25勝12敗。投球回数329回。401奪三振(世界記録)。防御率2.13。日本の試合数が134試合の時代の記録である。ちなみに当時のメジャー記録が162試合で382個。
  4. 3年目の1969年は15勝10敗。投球回数258回3分の1。防御率リーグ1位の1.81。奪三振262個。4年目の1970年は8完封を含む21勝17敗。投球回数337回3分の2。奪三振340個。防御率2.13。5年目の1971年(昭和46年)は15勝14敗。投球回数263回3分の2。奪三振267。以降は省略するが、江夏の生涯成績829試合登板、投球回数3196回。206勝158敗193セーブ。奪三振2987個。防御率2.49。
  5. ただ5年目の1971年に関して特筆すべきは、7月17日、西宮球場でのオールスター第1戦の9連続三振。前年の球宴からの奪三振を合わせると14連続三振。この年の第3戦でも1個を奪い連続奪三振記録は15まで伸びた。もはや絶対不滅の大記録である。
  6. ここ3年NHKBSの「球辞苑」という番組が大好評である。何が面白いかと言えば、野球に関するコンピュータデータを微に入り細に入り分析し尽くすからである。例えばバットと言えばその長さ、太さ、グリップまで、そこまでやるかと、調べ尽くす。
  7. この球辞苑の考え方からすれば、江夏は「潰れるべくして潰れた」ことになる。現実に江夏は、3年目から肩が壊れ、肘をやられ、最後には心臓をやられた。「太く短く」の代表的な例だが、野球生活後年の江夏は「力から技へ」転換、「先発完投型から抑え専門」投手へと変貌していく。最たるものが、ご存じ「(伝説の)江夏の21球」である。
  8. ポスト平成は「人間の脳と機械が直結する時代になる」と言われている。脳とコンピュータをつなぐブレーン・マシーン・インターフェース(BMI)技術の進化で、頭に浮かんだ言葉や意思を機械が読み取って伝えたり、自分の身代わりのロボットを念じて動かすことができるようになる、としている。
  9. だが一方でBMIの技術は個々の人間の思考を「オープン化」する作用もある。機械と人体の融合が、コンピュータやロボットに過度に依存する社会につながる可能性を秘める。今回「江夏豊という全く枠外の人間」を取り上げたのは、次代を見据えた日経新聞の強烈なアンチテーゼなのかもしれない。日経新聞も、やる時はやるもんである。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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