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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

3/12号

『特集:ジワリ迫る、権力集中・強大化する中国の恐怖』
  1. 文化大革命で中国が大混乱に陥ったのは、建国の父・毛沢東の権力集中が行き過ぎたためだった。改革開放で建て直そうとした鄧小平は、文革の悲劇を繰り返さないよう、ひとりの人間に権力を集中し過ぎないための集団指導体制の制度化に注力した。それは「10年毎に秩序ある政権交代を実現するための仕組み」として完成した。
  2. 現在の世界の最高権威者のひとりと自他ともに認める習近平現国家主席は、時間をかけて念入りに周囲を固め、国家主席の任期撤廃する憲法改正を提案、有無を言わさず実施する流れとなっている。習近平が5年前に最高権力を握った時、中国は憲法に基づく統治へと移行するものと多くが予想した。だがその幻想はものの見事に砕け散った。
  3. ソ連崩壊後、西側諸国はソ連に次ぐ共産主義国だった中国を、世界経済に迎え入れた。中国を世界貿易機関(WTO)等の西側機構に参画させれば、第二次大戦後に成立した規則に基づくシステムで縛れると高を括っていたのだ。
  4. 確かに西側諸国は、中国を世界の市場に組み込むことには成功した。中国は世界の市場をバックに、世界最大の輸出国になり、全体の13%強を占めるまでになった。進取的で機知に富む中国企業は、世界で時価総額の大きい上場企業100社の12社を占める。
  5. ただ当初の目論見の中で大きな誤算は「経済統合で市場経済への転換が促進され、中国国民が豊かになるにつれ、民主主義的な自由や権利、法の支配を渇望するようになるだろう」との予測が外れた点だった。
  6. そして中国は、米国と肩を並べる世界の経済大国にのし上げっていく中で、独自のシステムを構築し始めた。その代表例が「一帯一路」構想である。100兆円超を投じると喝破する同計画は、最初は“眉唾”的な見方をされてはいた。しかし時間が経つにつれ、徐々に欧州の戦後復興を支えたマーシャルプランをしのぐものだと言われ始めた。
  7. 中国は、急速に経済力を増強するのに並行して軍事力の急速な強化と、近代化を図った。こうした絶対的な軍事力を背景に、参画する気があるどの国にも中国資本の網をかけようと画策し始めた。かくして東アジアにおける米国の優位性は薄らぎ始めた。
  8. 現在の世界経済の軸となっているIT産業の勢力図は「米国VS中国」を軸に動いている。アップルやググールをテンセントやアリババ等の中国勢が猛追する態勢だ。中国は2030年にAI(人工知能)で世界一になる国家目標を掲げ、米国を超えを目指す。「中国ITの成長は、所詮は膨大な人口を抱える自国頼み」の時代ではないのだ。
  9. 「やはりあの国は特殊」「あのやり方にはついていけない」のが本音。が、事ここに至っては無視できない。独裁体制に入り始めた中国に、瞬間クラッシュのリスクは秘める。だが結果論から言えば、経済大国(であるはずの)日本は、中国に2周~3周遅れになり始めている。恐るべし中国。平和ボケ日本に油断があるように見えてならない。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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