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■今週の市場展望

著者:青柳孝直

3/19号

『特集:「QRコード」による金融革命』-銀行業がサービス業になる日-
  1. 「QR コード」。余り聞き慣れない単語だが、商品パッケージ上に印刷された四角いゴチャゴチャした模様仕様の記号を指す。1997年、日本のデンソーが、従来のバーコードより多くの情報を格納できる2次元コードとして発案した世界的な技術である。
  2. ところがデンソーは技術を囲い込みしなかった。読み取り機を販売する際、コードを作るソフトウェアを無料で公開した。今になってみれば有料にしておけば(例えば1コード10銭程度)よかったとの声もあるが、無料にしたからこそ世界に普及した。米マイクロソフトは「QRコード」に似たコードを開発したが、課金したため失敗している。
  3. この「QRコード」が爆発的に普及するのは、カメラで読み取れるからだった。中国ネット通販大手のアリババが採用して以降、わずか数年で毎日1億3千万回もの取引を生む強大スマホアプリに成長し、審査が難しいクレジットカードを駆逐し始めた。
  4. 背景にはデビットカードの普及も見逃せない。従来のクレジットカードは、買い物をした際にクレジット会社が一旦支払、それを後ほど請求する。それはすなわちクレジットカード会社の消費者に対する「貸付」であり、相応の審査が必要となる。
  5. 一方、デビットカードは「預金から直接引き落とす」ことから審査は無用。スマホを使った「QRコード」はその延長線上にある。専用口座から直接引き落とすことになる。残高がなければ、買い物はできない。キッパリ審査無用の世界である。
  6. 日本の銀行は「社会の公器」だった。ユニバーサルなサービスを提供するとの名目で、店舗の拡大を図ってきた。しかし21世紀の爆発的なデジタル化で、店舗の絶対的な必要性はなくなり始めた。スマホの画面で、日常的な大概の作業は全て完結できる時代だ。

    銀行は、預金はあってもマイナス金利では付利しない。現在は「金庫番」。で、逆に“(預金の)預かり手数料”を徴収する時代。金融技術の進歩で、資金調達方法が多様化し、「必要な資金は銀行から借り入れる」という常識も、“絶対的”ではなくなった。かくして預金&貸出を主業務とする従来の銀行では生き残っていけない時代となった。
  7. もう一つ、「仮想通貨」の登場も見逃せない。ただ仮想通貨には誤解が多い。昨今言われる仮想通貨は「実体のないものをあるものとする」。ある意味で“まがい物”。本来の仮想通貨とはスイカやパスモのように「現金に代わり、ある一定の世界でのみ流通する専用通貨=電子マネー」が本来の姿である。利鞘を狙った投機的動きが出る余地はない。
  8. こうしたモノの売買やサービスを介在した“電子マネー”は、キャシュレス化が進捗するにつれ益々拡大していくのは必至。従来のクレジットカードも駆逐しそうな気配だ。業界では仮想通貨という不可思議な言い方を避け、「デジタル通貨」と呼び始めた。
  9. 日本の三大銀行も、統一QRコードを使った「スマホ決済19年実用化」に向け舵を切った。銀行業は情報を提供するサービス業になりつつある。これも時代の流れだ。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


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