コラム

コラム一覧へ

著者:青柳孝直

4/02号

『特集:官僚の予想未来図』今週の市場展望
  1. 自分の出た高校は全国有数の典型的な受験校だった。当時は東大・京大など旧六帝大に合格する者は100人超。当然にして天下の東京大学は常に注目されるが、身近に知る東大合格者は、ごくごく当たり前に合格していった。見えないところでは努力はしているのだろうが、そんな雰囲気は微塵もみせず、“艱難辛苦”などといった雰囲気とは無縁だった。休み時間にはスポーツ紙や漫画などを読んで見せたりした。
  2. そんな彼らは、大学受験で持っているエネルギーを使い切っていないから、大学に入っても“(勉強時間を含めた)普段通りの生活”をする余裕があった。彼らにとって大学生活は、通常通りの生活スタイルの継続であり、その延長線上に国家試験があった。
  3. 中央官庁に入るための国家試験は、司法試験や公認会計士試験と同レベルの難関。その中でも、外務省・入省試験は別メニューであり、また旧大蔵省に入省できるのは国家試験の上位合格者。従って、その時ばかりはさすがの秀才連も真剣に“受験勉強”を強いられる。外務省が“異端”、大蔵省(現財務省)が“最強”と言われる所以である。
  4. 現在、全国区でその名が知れ渡った(福島県出身・東大経済卒の)佐川宣寿・前国税庁長官は82年入省組でも、トップコースを走る逸材であったのは言うまでもない。何とはなしに元ドリフターズの仲本工事に雰囲気が似通って(!?)おり、国会の予算委員会中継等で再三見かけるようになって、ある種のファンになってしまった。
  5. 3月27日、その佐川前国税庁長官長が「文書改ざん」で国会証人喚問に招致された。応答では「何かを守る」ことに必死になっており、悲壮感が漂う。確かに国家の決済文書の改ざんは、国家を揺るがす“大罪”に違いない。だが頭脳明晰な人間が、そんな基本中の基本を理解していないはずがない。何らかの圧力がかかった、とみるのが自然だ。
  6. 一連の森友問題は、財務省関係者間では「安倍首相関連事案」と呼ばれているようだ。安倍首相の夫人昭恵さんが関わっているからである。「善意の暴走」という表現をされ始めているが、準公人たる首相夫人の“暴走気味の”関与は誰の目にも明らかだ。
  7. 故岸信介元首相の長女で、故安倍晋太郎元外相夫人にして、安倍晋三現首相の母堂である洋子さんが「離婚の可能性を匂わした」と言われている。確かに自分の細君が、闇雲にあちこちと動き回り、仕事の邪魔をする(!?)パターン、少々厄介だ。大概のオトコなら一喝するだろう。趣味で飲み屋を経営する首相夫人など前代未聞だ。
  8. 政治家と官僚の関係は、故松本清張が描いたように、戦前も戦後も「権力を盾に生き残る政治家VS切り捨てられる官僚」の色濃い世界。内閣人事局が仕切るようになって「忖度(そんたく)」という言葉が乱舞する。官僚の世界は、一般社会からは崇拝度が高い。だが衆参計4時間超の喚問を終えた後の声もかすれ、疲れ切る高級官僚・佐川宣寿の姿を見て思った。官僚の世界に未来図が描けるのか?相変わらず残酷な世界だな、と。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】
国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。

連絡先:
株式会社 青柳孝直事務所
〒107-0052
東京都港区赤坂2-10-7-603
TEL:03-5573-4858
FAX:03-5573-4857


書籍紹介

コラム一覧へ

ページの先頭へ戻る