■今週の市場展望
著者:青柳孝直
6/25号
『特集:ドナルド・トランプ作・演出・主演の政治ショー』
- それにしても劇的勝利だった。日本時間6月19日のW杯コロンビア戦。試合開始直後のPK一発。ハンドを犯したC.サンチェスの一発退場。中だるみはあったが、、後半に大迫のヘッドで決勝点。アジア勢が南アのチームに初めて勝利した歴史的な一戦だった。なせばなる、やればできる。どうせだめだろの予想に反し、日本中が大騒ぎになった。
- 冷静になってみて、はてと、ちょうど1週間前、同じような大きいイベントがあったんじゃなかったっけか…6月12日の米朝会談だった。あれも歴史的な出来事には違いなかった。日本国民どころか、世界中の人間がその顛末を見守った。
- 言ってみれば、長時間のドナルドドランプ作・演出・主演の「ザ・政治ショー」。世界中がそのショーを見守った。少なからず緊張感があった。だがそれにしても何らの記憶にも残らない、極めて曖昧な会談だった。シンプルに言ってみれば、「それまで喧嘩ばかりだったじいちゃんと孫の“じゃれあい”」の様相だった。
- いい機会なので「米朝首脳共同声明」の全文を原文(英語)で読んでみた。「いつまでに、何を、どうやる」ことは一切触れない。「細部は今後開催予定の米朝高官級協議に委ねる」という。ああだこうだやっているうちに、時間切れでトランプ大統領が大統領でなくなってしまうかもしれない。
- 唯一間違いないのは、好ましい方向と悪い方向どちらにも朝鮮半島情勢が大きく作用するということだ。仮に北朝鮮が核武装すれば、日米が防衛力強化→中国のいちゃもん→韓国の革新政権の北朝鮮へのすり寄り→日米韓の分裂。
- (可能性は極めて小さいが)反対に核問題が解決するなら、とりあえずは日本の拉致問題の全面解決、在韓米軍の縮小、日本の北朝鮮に対する戦前の補償開始、従来の日米韓の安保環境の激変等など….いずれにしても北朝鮮をめぐる核問題は、日韓のみならず米国を中心にした政界秩序に挑む中国・ロシアを絡めたパワーゲームになっていこう。
- かくして、総合的に考えてみれば、米有権者に成果を誇りたい超短期主義・トランプの“やりたい放題”だ。8日から開催されたG7の首脳会議では「1対6」の構図。西側同盟国の輸出を「安全保障上の脅威」として浴びせた鉄鋼や自動車への制裁関税でダメ押しとなった。返す刀で対中制裁関税の発令。当然して欧州も中国も報復関税の発表だ。
- 世界最強の西側国家のリーダーが、長年の同盟国に背を向け、独裁的な国家とのディール(取引)にいそしむ。そんな倒錯した構図が世界をしらけさせた。トランプ米大統領が暴走を続け西側の結束が崩れれば、結局は民主主義と距離を置く中露の存在感を高める。短期的とは言え、朝鮮半島の安定は実現された。だが世界秩序は揺らぎ始めている。
- この2週間、ジャンルが違うとはいえ、日本にとって歴史的なことが起きた。「大迫はんぱない」が流行語大賞になりそうだ。そして「トランプ、中途半端だ」も有力候補だ。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円