■今週の市場展望
著者:青柳孝直事務所
6/23号
『特集:原油バブルの崩壊は7月4日? ―帝王・G.ソロスの御託宣―』
- 原油価格が1バーレル=130㌦超の高値圏で推移している。日足・週足・月足のチャートが全く機能しないまま、歴史的な上昇相場が継続している。最近の世界の金融市場の大きな話題は「破壊的な上昇相場が終了し、反落に転じるのはいつか」。
- 年明けに初めて100㌦を突破した原油は、5月5日の米投資銀のゴールドマン・サックスが「6-24ヶ月以内に150~200㌦」との予測を出したのを機に上昇ピッチを速めた。「中国・インドなどの新興国の需要増」「採掘・精製面の限界」「中東の地政学リスク」。こうした予測の“後付け”理由はいくらでもある。
- そうした混乱の中、世界のヘッジファンドの帝王ジョージ・ソロス(以下G.ソロス)は、滞在中のロンドンで以下のような発言をしている。「いまの石油バブルは、そう遠くないうちに崩壊する。そして世界中に未曾有の金融危機を巻き起こすだろう」
- G.ソロスに拠れば、1バーレル=130㌦超で動いている最近の原油相場は、実際の需要に基づくものではなく、投機家が投機目的で吊り上げた結果だとしている。「その一連の投機家の中にG.ソロスもいた」には間違いないのだが…
- (日本の)経済産業省の2007年度「エネルギー白書」草案に拠れば、07年後半に原油価格が100㌦に迫った時点で、需給要因は50~60㌦、投機リスクや地政学リスク分は30~40㌦になると試算している。
- 今回のG.ソロスの発言を、現在の諸環境から説明すると以下のようになると思われる。米国のサブプライムショックが世界中に広がっている現在、(インフレにもかかわらず景気後退が起こる)スタッグフレーションも世界に拡大し始めている。
- 同時に、世界的に原油需要も後退し、現状の“石油バブル”も崩壊し始める。怖いのは、(大量に投入されている投機資金が一斉に引いた後の)相場の崩壊が強烈であればあるほど、世界経済が大恐慌に陥る可能性が高いという点である。
- 証券化市場のバブルが崩壊し、金融市場が揺らぐ中で、機関投資家が商品を組み入れる比率は高まっている。1970年代の二度の石油危機は、カルテルを組んだ供給側が引き起こした。しかし今回の原油高騰を煽っているのは、拡大し過ぎて、実体経済と釣り合いがとれなくなっている投機マネーである。
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結局、過去のG.ソロスの手法を考えても、今回の発言はG.ソロス自身が「『(原油の)買い』から、以降は『売り』に転じている」との見方が妥当なようである。「Buying Climax=皆が一斉に買いに入って相場を押上げ、ドスンと落ちる分岐点」近し。
最近の金融市場で盛んに言われ始めているXデーは、米独立記念日の7月4日。「150㌦まで押し上げた相場は急落、一気にバブルが崩壊する」。相場の世界には「山高ければ、谷深し」という有名な格言がある。いずれにしても怖い展開ではある。
青柳 孝直
(あおやぎ・たかなお)
【略歴】国際金融アナリスト
1948年 富山県生まれ。
1971年 早稲田大学卒業。
世界の金融最前線で活躍。日本におけるギャン理論研究の第一人者との定評を得ている。
著書は、『新版 ギャン理論』『日本国倒産』など多数。翻訳書としては、『世界一わかりやすいプロのように投資する講座』など。
連絡先:
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書籍紹介
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ISBN:978-4-86280-068-8
定価:1,365円
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ISBN:4-89346-913-4
定価:2,520円